AIで画像を作れるだけでは足りない。これからの広告・POPに必要な二つの視点
「AIっぽさ」と「再現性」を、使える一枚から考える
ぼくの近所に、若い夫婦二人で営むフレンチレストランがあります。
小さな飲食店のPOPを考え始めたきっかけは、その店でした。
お店のリフォームも自分たちでDIYし、朝から夜遅くまで二人で頑張っている姿をみています。
その姿を見ていて、新メニューのお知らせだけでも、AIでもう少し楽にできたら、きっと役に立つと思うようになりました。
僕はAI画像生成を3年ほど続けています。
始まりは、ゲーム用のアイコンやキャラクター画像でした。
仕事では、健康診断やイベント、出欠確認などのお知らせ画像も作ってきました。
好きで続けてきたことを、小さなお店の役に立つ形へ変えられるかもしれない。
そう思ったんです。
ただ、僕は飲食店で働いた経験がありません。
店主から販促の困りごとを直接聞いたことも、まだありません。
「忙しいお店なら、きっと画像作りに困っているだろう」
今のところ、これは僕が思う気持ちです。
AIの便利さは、まだまだ一部の人しか正確に認識してないと感じてます。
反面、AI画像を嫌う意見も沢山出ています。
『AIぽい』が懸念される中で、何が原因かを認識することが出来れば、AI生成の広告などの懸念が軽減できると考えています。
最初は、かなりの画像ガチャでした
3年ほど前、僕はゲームで使うアイコンを作りたくて、AI画像生成を始めました。
頭の中には、『炎を舞っとった剣士』の作りたい絵があるのに、どう書けばAIへ伝わるのか分からない。
ネットで調べて、画像を作り、違和感を探して文章を書き換える。
正直、かなりの画像ガチャでした。
自分で使う画像なら、最後は「格好いいから、これでいいか」で決められます。
でも、誰かに頼まれて作るようになると、それでは決められませんでした。
こんなアイコン作ってお願いされて制作する時に、どんな雰囲気が好きなのか、
今まで使用してきたアイコンを参考にして、相手の反応を聞きながら直していく。
そうすると、同じAIで作っていても、少しずつその人の一枚に近づいていきました。
いま振り返ると、画像を近づけていたのは、長いプロンプトだけではなかった気がします。
相手から聞いた情報が増え、僕が勝手に決める部分が減ったこと。そのほうが大きかったのだと思います。
僕が気になる「AIっぽさ」
AIっぽい画像と聞くと、僕はまず不自然な指を思い浮かべます。
3年前のAI画像生成は指と腕の不自然な絵画との戦いでした。
滑らかすぎる肌や、強すぎる光もそうです。
以前は、僕も綺麗な画像が出来る事のような、見た目の問題だと考えていました。
でも、広告やPOPとして見ると、気になるのはそこだけではありません。
例えば、AIへ「おいしそうなラーメンを作って」と頼んだとします。
AIは湯気を増やし、具材を豪華にして、器まで高級そうなものへ変えるかもしれません。
画像だけを見れば、おいしそうに見えると思います。
けれど、お店が見せたいのは、AIが考えた理想のラーメンではなく、実際に出している魂を込めたラーメンです。
器、チャーシューの枚数、海苔の位置、スープの色、量。どれも、その料理を作った人の集大成です。
自然光や写実的な質感を指定すれば、写真らしくはできます。
それでも実物と違うなら、その店の告知には使いにくいと思います。
僕がいま気になっているAIっぽさは、画像がきれいすぎることだけではありません。そこから「誰の商品なのか」が抜けてしまうことです。
Kantarが2024年に公表した調査では、AI生成広告を気にかけている消費者は41%でした。
この数字だけで、AI広告が嫌われるとは思っていません。
ただ、実物との境目が分かりにくければ、見る人が不安になるのも無理はないなと感じました。
AIを使ったことを隠すより、実際の商品から離れないようにする。そのために増やしたいのは、僕の想像ではなく、お店から受け取る情報です。
直したら、残したいところまで変わる
もう一つ、僕が何度も困ったのが再現性でした。
一度よい画像ができても、表情を直したら服装まで変わる背景を変えたら、商品まで別の形になる。
少し直すたびに全体を見直すうち、次にどこを触ればいいのか分からなくなることがありました。
最近のAIの画像編集の技術はかなり向上しましたが、うまく利用するに技術が必要と感じます。
そこで、プロンプトの書き方を変えました。
用途、いちばん見せたいもの、構図、光、変えてはいけない部分、最後に確認する項目。これらを分けて考えるようにしました。
一回で完璧に出すためではありません。
違和感が出た時に、直す場所を見失わないためです。
仕事のお知らせ画像でも、AIに全部を任せてはいません。
箇条書きを画像案へ整理するところは任せても、誤字や日付、場所、案内の内容は人が確認します。
この作り方を周りの人へ渡した時、余計な情報が入りにくく、整った画像を作りやすいと喜んでもらえました。
その時に感じたのは、僕だけが一枚作れたことより、別の人も同じ順番で作れたことのほうが、仕事では役に立つのかもしれないということでした。
広告やPOPにも、次の一枚へ残したいものがあります。
商品の形や量、人物の特徴、店の色や雰囲気、価格を置く場所などです。
でも、それと同じくらい、人が最後に何を確かめるかも残しておきたい。
僕は再現性を、同じ画像をもう一度出すことだけだとは考えていません。
担当する人が変わっても、同じ確認を次もできることまで含めて、再現性なのだと思っています。
調べてみると、Googleは人物や物の見た目を保つ画像編集機能を案内しています。Adobeにも、企業のブランド資産を使って一貫性を保つ仕組みがあります。
一方、IABが2025年に米国の広告業界幹部へ行った調査では、7割を超える人が、誤った生成やブランドに合わない表現などを経験していました。
これは、僕だけがプロンプトでつまずいている話ではないようです。
画像を作れるようになった後も、何を変えず、どこを人が見るのかは残る。
技術が進んでも、ここはまだ人の仕事なのだろうと思います。
まず、店の人に聞くところから
AIっぽさと再現性は、別々の問題に見えます。
でも僕には、どちらも「AIへ渡していない情報」から起きているように見えています。
実物の情報がなければ、AIはそれらしく補うしかない。
残したい条件が決まっていなければ、修正のたびに別のところまで変わってしまいます。
だから今、店の人へ聞いてみたいことがあります。
「AIで何を作りたいですか」ではなく、「何を勝手に変えられたら困りますか」
商品そのものなのか。
量や器なのか。
価格や提供条件なのか。
それとも、長く守ってきた店の雰囲気なのか。
僕はまだ、店主からその答えを聞けていません。
聞かないまま自分の想像だけで整えたら、見た目が自然でも、その店の一枚にはならない気がします。
これまでは、作れる画像を増やすことに時間を使ってきました。
これからは、店で使えない理由を一つずつ減らしていきたいです。
まずは、店の人に聞くところから始めます。



