「ガンダム大地に立つ!!」から始まる、新しいマーケティングの話
ガンダムと空想果実から考える、AI時代の「探索したくなる世界」の作り方
商品を売る前に、探索したくなる世界を作る
「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、すでに半世紀が過ぎていた。
地球のまわりの巨大な人工都市は、人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった」
この語りを読むだけで、頭のなかにあのオープニングが流れ始める人は多いですよね。
ぼく自身、宇宙世紀のガンダムが大好きです。
キャスバル・レム・ダイクンになりたいくらいです。
宇宙世紀0079。
地球連邦とジオン公国が戦い、コロニーが落ち、アムロとシャアが出会う世界への入口です。
第1話でガンダムが立ち上がる場面も、忘れられません。
今見ると、昭和アニメらしい作画ありますよね。
でも、それも含めて記憶に残っているのですよね。
ガンダムの強さは、モビルスーツの格好よさだけではありません。
人類が宇宙へ進出したあとも、争いをやめられない。
正義と悪をきれいに分けられない。
そうした重いテーマが、物語の奥に流れています。
だからこそ、放送から長い時間がたっても、世界を調べ、語り続けるファンがいるのと感じてます。
新作を見たら、宣伝の方法が気になった
先日、YouTubeのおすすめに、ガンダムシリーズの新作アニメ『機動戦士ガンダムRG XARX-ZERO』のティザー映像が流れてきました。
2027年に展開予定の作品です。
見つけたときは、普通にうれしかったです。
まずはガンダムファンとして、楽しみにしながら動画を再生しました。
ところが、見ているうちに、作品そのものとは別の部分にも興味を引かれました。
プロモーションの作り方が、面白かったのです。
『XARX-ZERO』は、2027年発売予定のアクションゲーム『GUNDAM ROGUE ORBIT』と同じ世界観を共有します。
公式は、このアニメとゲームを横断する企画を「RGプロジェクト」と呼んでいます。
アニメとゲームが、同じ世界を異なる立場から描き、ひとつの歴史を立ち上げていく企画です。
アニメを放送して、人気が出たらゲーム化する一般的なやりかたでないようです。
ゲームを売るためだけに、宣伝用のアニメを作ったわけでもなく、
最初から、アニメとゲームを、ひとつの世界に入るための別々の入口として設計しています。
これだけ大きな企業が、従来とは違うプロモーションに本気で取り組んでいる。
動画を見ながら、ぼくはそこに強く引かれました。
「見る」と「遊ぶ」で、ひとつの歴史を作る
『XARX-ZERO』は、宇宙世紀とは異なる、新しい世界線のガンダムです。
人類は未知の存在との戦いによって地球を放棄し、「A.A.」という新しい時代を生きています。
一方の『GUNDAM ROGUE ORBIT』では、プレイヤーがガンダムヘリックスのパイロットとなり、広大な宇宙を進んでいきます。
ここで面白いのは、同じ物語をアニメとゲームで繰り返すわけではない点です。
アニメには、映像を通して世界を見る体験があり、
ゲームには、自分で機体を動かし、その世界を進む体験があります。
アニメを見れば、ゲームの時代に何が起きるのか気になります。
ゲームを遊べば、この世界がどのように生まれたのか知りたくなります。
物語のなかに残された空白が、次の作品への導線になる理由です。
「ゲームも買ってください」と、広告で繰り返し叫ぶ必要ないかもしれません。
世界をもっと知りたい人が、自分から次の入口を探します。
これまでのメディアミックスは、ひとつの作品が成功したあとに、ゲームや漫画、玩具へ広げる形が中心と感じてました。
RGプロジェクトでは、世界そのものを複数の媒体で同時に立ち上げています。
完成した作品を横へ広げているのではなく、最初から、複数の入口を持つ世界を作っている新しい手法ですよね。
『U.C. ENGAGE』で始まっていた流れ
長男に聞いたのですが、すでにスマートフォン向けゲーム『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』でも、映像とゲームを融合する試みが始まっているようです。
『U.C. ENGAGE』では、過去の宇宙世紀作品をアニメ付きのダイジェストで振り返れます。
さらに、アニメ、バトル、アドベンチャーを組み合わせた新しい物語も楽しめます。
基本無料で入り、一部のアイテムに課金する仕組みです。
ここでも、物語は商品ではなく、世界への入口として機能しています。
まず宇宙世紀に触れてもらいます。
アムロやシャアの歴史を追い、今まで知らなかった作品に出会ってもらいます。
そこからゲーム内の遊びだけでなく、過去の映像作品やガンプラへ興味が広がっていきます。
RGプロジェクトは、この流れをさらに進めたものに見えます。
既存の宇宙世紀をゲームで広げる段階から、アニメとゲームで新しい歴史を最初から作る段階へ進んだのです。
カンロの「空想果実」にも同じ構造がある
業界も企業規模も違いますが、同じ設計を感じた商品があります。
カンロの「空想果実」シリーズです。
空想果実では、実在しない果実が、どこかで本当に発見されたかのように扱われます。
商品にはパッケージがあり、写真があり、果実の特徴や味まで設定されています。
ユーザーは、ただグミを買う人ではありません。
未知の果実を見つけた「発見者」として、世界に参加します。
SNSでは、商品の感想だけでなく、研究や調査を応援するようなコメントまで生まれています。
企業が作った設定を、ユーザーが自分の言葉で膨らませているのです。
ガンダムとグミでは、扱っている商品も予算もまったく違います。
でも、構造は似ています。
「商品を売る前に、探索したくなる世界を作る」
ここなのです。
AIで、小さなお店も世界を持てる
以前なら、こうした世界観づくりは、大企業にしかできませんでした。
架空の設定を考え、撮影し、デザインを作り、何本ものコンテンツを用意するには、お金も人手も必要です。
小さな飲食店には、なかなか難しい取り組みでした。
でも、AIがこの壁を壊し始めています。
たとえば、飲食店が「雨の日にしか現れない裏メニュー」を設定します。
商品の形や質感、ロゴなど、崩してはいけない部分は固定します。
そのうえで、雨の窓際、閉店後の厨房、薄暗いカウンターなど、背景や照明だけを変えた画像を作ります。
そして、Threadsなどで少しずつ投稿します。
すべてを説明する必要はありません。
「昨日、見た人がいるらしいです」
「いつでも注文できるわけではありません」
そのくらいの余白を残します。
すると常連客が、「あの投稿を見ましたか」と話し始めます。
お店が宣伝するのではなく、ユーザーが自分から見つけたくなるのです。
もちろん、存在しない商品を、本当に買えるように見せるのはよくありません。
企画であることは明確にしたうえで反応を確かめ、人気が出たら本当に商品化すればいいでしょう。
AIは、安く画像を作るだけの道具ではありません。
これまで予算のある企業しか持てなかった「継続する世界観」を、小さな事業者にも開放する道具です。
これからは、商品を並べて「買ってください」と投稿するだけでは埋もれます。
必要なのは、その商品に出会いたくなる世界です。
ガンダムは、アニメとゲームで新しい歴史を作ろうとしています。
空想果実は、商品を買った人を発見者に変えました。
では、自分たちの商品には、どんな世界をまとわせられるでしょうか。
まずはひとつ、「お客さんが探索したくなる設定」を考えてみると面白いですよ。
コツコツ、世界を作っていきましょう。






